映画
このジジイ、かなりヤバい
このコピーから「ドント・ブリーズ」的なよぼよぼの爺さんだと思ってイタズラしたらめっちゃ強くて返り討ち系の作品かと思ったら大違い。最後ちょっと涙でそうになりました。
〈作品概要〉
監督:カスラ・ファラハニ※長編デビュー作
キャスト:ジェームズ・カーン
ローガン・ミラー
キーア・ギルクリスト他
2017年3月3日DVD発売、日本劇場未公開作品
尺:98分
〈あらすじ〉
ショーンと友人のイーサンは、近所のひとり暮らしの老人宅に忍び込んで隠しカメラを設置し、ドッキリを仕掛けることに。ドアを急に開閉したり突然音楽を流したりして老人の反応を楽しもうとするが、老人は驚く様子を見せないばかりか、不可解な行動を取りはじめる。老人が頻繁に地下室に出入りしていることを不審に思ったショーンたちは、そこに老人の妻の死の真相が隠されているのではないかと疑うが…
〈ネタバレあり感想〉
まず、結論から言うと予想外のオチで面白くて、感情がぐっちゃぐっちゃにされます。
コピーやら、作品の事前説明の中で悪ふざけした配信者がおじいさんに返り討ちにあうサスペンス映画と思わされます。
その手のものを求めると、頭殴られたような衝撃で最後は切ない気持ちになります。
序盤は構成として、ドッキリ→反応を見る
の繰り返しなんですが、何故かこれが思ったような反応が得られない。
あれ、もっと驚かないの?と我々みてる側も主人公達も思うのですがそのドッキリの後に老人の回想が流れます。
どうやら、ドッキリの仕掛けがたまたま奥さんとの思い出のトリガーになっていて、驚くと言うより思い出しているという感じになってるんですね。
思ったような反応を得られないのと、何故か「こいつはやばい老人なんだ!奥さんを殺してるんだ!」と決めつけているイーサンは、老人が何かドッキリがある度に入り込む地下室に、女性を監禁してるとか、異常な秘密があると思い込んでます。
ここの描写は完全に我々視聴者が「ドント・ブリーズ」の知識があって、やばい老人の地下には何某か秘密があるという図式を勝手に繋げるだろうという事も織り込み済みの設定にしているような気がします。
そしてエスカレートするイーサンに対して、やりすぎだと思ったショーンはもう辞めようとするのですが、老人の飼っている猫が仕掛けたカメラを落としてしまい、回収するためにイーサンはショーンの制止を振り切って老人の家に侵入します。
ここまでで、物語の終盤になります。
途中、裁判所のシーンが挟まれ、誰かが裁かれているような構成になって、振り返る形でドッキリの話になるので、恐らく誰かが死んでいる、その罪を誰かが問われていると言うところまでは視聴者にも情報として与えられて進行しています。
私はこの時ずっとイーサンが老人に殺されていて、その裁判が行われているものだと騙されていました。そういうミスリードを映画でそもそも誘ってます。
(私は本当鈍くて物語の先がほぼ読めたことがないです。というか読もうともあまりしません。勝手に想像ついちゃう時は別ですが)
老人の回想が挟まる事で、すでに先の展開が読めてしまう人もいると思います。
無事にカメラを回収したイーサンでしたが、目の前に地下室が…。
好奇心を抑えられずに降りた地下室には薬品とアンティークのベルが。ベルを手に取った時に音が鳴り老人が目を覚まします。
イーサンは慌ててそのベルを掴んだまま上に上がり、机の上にベルを置いて隠れるのですが、やってきた老人はベルを見てなんと自殺するのです。
そして警察が駆けつけて2人は逮捕され、老人の回想が始まります。
老人は、奥さんのことを愛していました。
しかし、奥さんは病気になってしまい、寝たきりの生活に。その時に老人が奥さんにプレゼントしたのがアンティークのベルだったんです。
「このベルがあれば、大きな声で呼ばなくても私はすぐに駆けつけるよ。」
地下でイーサンがベルを鳴らした時にすぐに目を覚ましたのも、奥さんが呼んでいると反射的に動いてしまったのかもしれません。
そして机の上にあるベルを見て、孤独に耐えきれなくなった老人は自殺してしまうのです。
もしかしたらそのベルを見て、奥さんから天国に呼ばれていると思ったのかもしれません。
何度も地下室に長時間いる描写から老人が孤独を感じている事は分かります。
ラスト、裁判所の判決で軽い刑となり裁判所を出て行く2人。
ショーンは申し訳なさそうに、イーサンは大勢の報道陣からのフラッシュやマイクを向けられ、不敵な笑みを浮かべて終わります。
イーサンは元々老人を悪い奴だと決めつけていた理由に、自分の父親が刑務所に入れられたのはこの老人のせいだと思っています。
家庭内で父親から母親へのDVがあって、母親が逃げ込んだのが老人の家で、老人が証言をして父親は刑務所にと言う事のようですが、何故かイーサンは逆恨みして復讐心が有ったようです。
それを考えると、冒頭で言っていた、人は認識が変わると神すら信じるみたいな事で、今回のように直接手を下さずとも人を操れるという事に気づき、ふっとほくそ笑んだのかもしれません。
という事で、かなり予想とは違う展開に期待していなかったジャンルに終わって見ればなっていたのですが、それでもこれはなかなかの良作だったなと思います。
配信鑑賞その①-「ザ・ファブル」【映画】「ザ・ファブル」配信鑑賞 -その①- - コツコの日記